2012年2月29日水曜日

歯ぎしり4

今日は「歯ぎしり2」で紹介したBite Strip の続編です。
睡眠時の歯ぎしり(sleep bruxism 以下SB)は、浅い睡眠時に起き睡眠の質にも影響します。さらにSBは、呼吸と心拍の乱れも生じることが解かってきています。
SBを解決することによって、高血圧や心筋梗塞などの予防につながり、人々のQuality of Life (QOL)の改善にも大きく貢献することも考えられます。
SBの歯への影響のみならず全身への影響を回避することは、今からの歯科医療へ突きつけられた大きな課題となることでしょう。
そこで、SBの測定を開業歯科医でも可能にしているのがBiteStripとGridCareです。
BiteStripについて、少し詳しくお話します。

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BiteStripは滅菌された状態で一式が箱詰されていますので患者さん受けも
いいようです。


Stripを就寝時5時間以上左の咬筋部に装着してもらいます。7時間以上経過したところで、剥がしてもらいます。結果は表示部(画面右の緑の部分)に最大噛みしめ力の30%以上の力が加わった回数がL,1,2,3と表示されます。

Tさんは「夜間の歯ぎしりが気になる」という42歳の女性患者さんです。
測定は3回(3晩)行いました。
一回目は、処置前で数値はで、最大噛みしめ力の30%以上の力が100回以上の加わったことになります。
二回目は、私が好んで使用しています3Dスプリントという前歯被覆型のスプリントを装着して寝ていただいた測定結果です。この時の数値は、Lつまり30回未満という結果が出ました。
三回目は、この3Dスプリントで得られた顎位をDawsonTechniqueで再現しながら咬合調整を行った後で、測定しました。表示はで31~59回という結果が出ました。
昭和大学・歯学部では誤差を抑えるために、一回の測定を3回づつ行うことを推奨されていますが、この実験では費用の関係もありそれぞれ一回にとどめました。

一回目、二回目、三回目と異なる結果が出ました。私が期待したのは三回目が、Lになることでした。咬合調整は、ほとんど削合するだけで積極的に修復をするというような処置をしていません。

毎回違う数値が出たことに一抹の期待を抱いています。つまり、『精度の高い咬合を与えることによってSBが治るのではないか』ということです。
ちなみに、Tさんには、満足頂いています。

今後、症例数を増やし、GridCareでも計測し、確証を得たいと考えています。

3DスプリントとDawsonTechniqueについては、回を改めてお話しします。

睡眠時無呼吸症候群の治療2

睡眠時無呼吸症候群の治療に用いる口腔内装置の作用機序については、十分解明されていません。下顎と舌根を前突させることによって、上気道の拡張効果があると考えられています。

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「いびきと睡眠時無呼吸症候群の歯科的治療」中川健三他著(砂書房)
の中の杏林大学医学部耳鼻咽喉科教室教授・長谷川 誠先生の図を
コピーさせていただきました。
この図の説明は、「舌根部が口蓋垂とともに気道を塞いでいる」


さて、昨日、取り上げた小西さんから報告メールをいただきました。患者さんの了解を得ましたので、全文転載します。


どうもお世話になります。

昨日の夜、初体験しました。
無呼吸対策の器械を外して寝てみたかったのですが、
あんなに「うるさくて眠れない!!」と言ってた妻が
「静かだと心配で眠れないから着けてくれ」
と言われ、初日は両方装着しました。

遅く帰宅(10時過ぎ)して深酒し、朝は除雪のために妻に叩起されて(5時半)
スプリント装着の感想を考える余裕もなく一日が始まってしまいました。

ただ、後頭部のハリというかモヤモヤは消えてすっきりしております。
ということで、気に入っております。
現在事務所で内業しており、電話が鳴らないことを祈り、スプリント装着しております。


さっそくブログを拝見させてもらいました。
あまり自分で装着した顔を見ることもないので
なんというか、この顔...無呼吸治療のモデルとしてはどうでしょう...

さて、私の事務所の紹介のHPですが、もう何年も冬眠状態でして
ずいぶん昔の私が写っております。
http://www.geocities.jp/tk_chousashi524/top.html
よろしくお願いします。

小西浄二


小西さんは、ご自分のHomePageにも紹介されているように土地家屋調査士として活躍されています。2級建築士、行政書士の資格もお持ちです。
関東圏はもちろん、全国どこへでも出張可能です。ご用命をお待ちしているとのことです。

2012年2月28日火曜日

睡眠時無呼吸症候群の治療

もう30年も定期チェックを続けているYさんが、来院され「閉塞性睡眠時無呼吸症候群でCPAP装置(写真2参照)を毎晩使用しているが、装置が出す音がうるさく奥さんからクレームが出ている」と訴えておられたので、「歯科でも同じような効果がある簡単な装置がある」とお話ししたところ、ぜひ作ってくれということになりました。下顎を前方に固定する装置を作りました(写真1参照)。Yさんの主治医・M先生の評価では口腔内装置はCPAP装置と同様の効果が得られているということで、YさんはCPAP装置から口腔内装置に替えることができ、奥さんの苦情もなくなったということでした。
さらに後日の定期チェックで、驚いたことにはYさんの復位性関節円板前方転位が治り、開閉口時のクリック音が消えていたことです。
ひょっとしたら、下顎位が変わったので、装置を入れなくても閉塞性睡眠時無呼吸症候群が治っているかもしれませんね!次回の定期検診時にYさんに、このことも伝えたいと思います。

小西さんは、今朝も秋田県能代から来られました。顎関節のクリック音や肩こりなどがあり、顎関節のMRI検査で復位性関節円板前方転位が確認できました。そこで写真1の装置を入れました。
小西さんは、「CPAP装置を毎晩使用しているが、出張の時に運ばなければならないのと、同室者が音がうるさくて2度と同じ部屋に泊まりたくないという」とこぼしておられました。
この装置は、復位性関節円板前方転位の治療のために入れましたが、睡眠時無呼吸症の治療にもなれば、一石二鳥というところです。担当の耳鼻科の先生と相談して、併用するかどうか相談してくれるように、お話しておきました。
小西さんは、“太っ腹”な方でご自分の写真を本ブログに掲載することを許していただきました。しかし、この、“太っ腹”が閉塞性睡眠時無呼吸症の原因になっていることも考えられますね(失礼)。



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写真1
関節円板前方転位を治すスプリント

写真2
CPAP装置を着けた小西さん
外泊するときには持ち運びしなければなりません。
日本歯科大学・小林教授の論文には、
CPAP応用による睡眠は3.3~5.5時間に対し、
スプリントの応用による睡眠は5.5~6.9時間と記載されていました。
スプリントの方が安眠できるようですね。
CPAP装置は健康保険で1ヶ月の費用が4000~5000円ほどかかるそうです。
そして1ヶ月に一度は、受診の必要があります。

CPAP【nasal CPAP(nasal continuous positive airway pressure) ネーザルシーパップ)】装置よりチューブを経由して鼻につけたマスクに加圧された空気(陽圧の空気)を送り、その空気が舌根の周囲の軟部組織を拡張することで吸気時の気道狭窄を防ぐ方法。ウィキペディアより引用



2012年2月24日金曜日

通信簿

今日は“歯ぎしり”の話は一休み
ちょっとした私の医院の自慢話です。

私の医院では、治療が終了した患者さんに術後のアンケートに協力していただいています。どのような評価をいただくのかは、小、中、高等学校の通信簿を見る心境です。

アンケート内容は、待合室は快適であるか?、歯科医は理解しやすい言葉で説明してくれる?、歯科医は来院するたびに私のことを考えてくれる?、など41項目にわたる質問に答えてもらっています。

今日、いただいたアンケートでは満点をいただきました。
ここの診療に関して、私の気に入っていることは?については、わざわざ印刷していただきました。


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男性の患者さんでしたので生け花を楽しみにとは意外でした。

開業以来、月1回お花の先生を迎え、稽古をしています。
中には師範の免許をとるスタッフもいます。
家内も折に触れ、活けてくれます。
女性患者さんには、好評です。

2012年2月23日木曜日

歯ぎしり3

今日は木曜日で定休日、毎週木曜日は私のゴルフ・ディです。
最近ゴルフの調子が悪く、旧知のレッスンプロを頼りに練習中。レッスンの成果を試しに、いざゴルフ場へという矢先の雨です。残念!
というわけで、今日も炬燵で顎関節症の本の執筆です。

話題は引き続き歯ぎしりです。
睡眠時の歯ぎしりなどの咀嚼筋の不随意運動で起こる症状は深刻です。歯をかみ合わせる力(咬合力)は通常自分の体重と同じくらいの力だと言われています。私が実際に測った人では200㎏の咬合力を発揮する人がいました。
これだけ大きな力で、歯を《こすり合わせる》わけですからその破壊力は相当なものです。
この結果、①歯がすり減る ②歯が破折する ③歯がグラグラする(歯周病になる) ④顎関節の組織に異常が生じる という症状が起きます。
下の3枚の写真は、ある外科医の口の中の状態です。かなりの歯の“すり減り”がみられます。「歯が短くなって見えないので患者さんと話すときに恥ずかしい」とのことでした。
この“すり減り”は睡眠時ブラキシズム(睡眠中の歯ぎしり)によって生じたものと思われます。患者さんには歯ぎしりの自覚はありませんでした。

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さて、この患者さんの治療後の経過は???
先日の馬場教授の話では
「睡眠時ブラキシズムの根本的な治療法はないが・・・・」
もし、睡眠時ブラキシズムが治らないというなら
このまま、破壊され続けるのを待って総入れ歯にするか?
総入れ歯でも、ブラキシズムが起きれば、さらなる悲劇が・・・・
この結末はいかに!
この患者さんは2~3ヵ月後に定期チェックに来院されていますので、
定期チェック時に写真をアップします。ご期待ください。


2012年2月22日水曜日

歯ぎしり2

昨日に引き続き「歯ぎしり」について触れます。
筋組織は、骨格筋、心筋、平滑筋の3つに分類されます。骨格筋は骨に付着し骨を動かす筋です。心筋は心臓壁を構成しています。平滑筋は胃や腸管、血管などの中空組織の壁を構成しています。
骨格筋は随意筋で、私たちが動かそうとすると動かすことができる筋です。
心筋や平滑筋は不随意筋で、私たちの意思では直接動かすことはできません。例えば心筋を早く収縮させたければ激しい運動をするなど、間接的にしか運動をコントロールすることしかできません。
心筋が随意筋であったら、寝ている間も心臓を意識的に動かしていなけばなりません。つまり、安心して寝ているわけにはいきません。
咀嚼筋(下顎を動かす筋)は、骨格筋で、噛もうとするときに動かすことができる筋です。この筋が不随意運動するのが、歯ぎしりです。この他の咀嚼筋の不随意運動としては、「噛みしめ」やカチカチ上下の歯を触れ合わせる「タッピング」という現象があります。
これらの運動を、総称してTooth contact habitsとよんでいる人もあります。
この中で、特に有害なのが睡眠時の歯ぎしり・睡眠時ブラキシズムです。この不随意運動を治せるかどうかが、歯科界の明暗を分けることにもなりかねません。
その前に、患者さんに睡眠時ブラキシズムがあるかどうかを診断しなければなりません。
私の医院では、二つの装置を使用して睡眠時ブラキシズムの動向を探っています。
1つはBiteStrip もう1つはGrindCare です。両者とも、日本の薬事は通っていませんので容易に手に入れることはできません。
睡眠時ブラキシズムの詳細や両製品の特徴や測定成績などは、明日から触れていきます。

画面をクリックすると拡大されます。

GrndCare

歯ぎしり1

今日の日経夕刊に下記の記事が出ていました。
寝ているときの“歯ぎしり”を、『睡眠時ブラキシズム』といいます。昭和大学歯学部教授の馬場先生は「睡眠時ブラキシズムは根本的な治療法はない・・・・・」とおっしゃっています。

私は、睡眠時ブラキシズムの大半は“かみ合わせ”の異常が原因で起こっているのではないかという仮説をたてました。これを実証するために患者さんに協力していただき奮闘しています。
この仮説が実証できれば、“かみ合わせ”を治すことによって、睡眠時ブラキシズムが治るということになります。顎関節症の原因の1つに数えられていたブラキシズムが、顎関節症の症状の1つということにもなります。
現在までの臨床の経過を明日から2、3回にわたり紹介していきます。

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2012年2月20日月曜日

日比谷図書文化館

昨日の日曜日は先週同様一日中、日比谷図書文化館で患者さん向けの顎関節症の本を執筆していました。
「キネマティックチェーン」について書きました。聞きなれない言葉だと思います。運動連鎖と訳されています。ダルビッシュ投手は躍動的なフォームで速球、変化球を自由に操ります。手だけで投げると生きた球は投げることができません。全身で投げるから威力のある球を投げることができます。これが運動連鎖です。これは、動的な現象です。静的な現象は姿勢として表れます。
つまり、“かみ合わせ”の不具合が肩や腰、下肢にも影響する現象をキネマティックチェーンというキーワードで説明することができます。

私が利用している日比谷図書文化館(旧・日比谷図書館)の特別研究室は素晴らしい環境です。日を改めて特別研究室について触れますが、今日は写真だけ紹介しておきます。
日比谷図書文化館4階・特別研究室
全席から日比谷公園が臨めます。
電源も有線・無線ランも利用できます。

2012年2月17日金曜日

仙台から

今朝は仙台から患者さんがみえました。
この24才の女性は3回目の来院です。仙台のT大学歯学部の診断では「復位性関節円板前方転位」という診断名で「治りません」ということで当院を受診されました。
1回目は診断と歯型を採りました。2回目は「復位性関節円板前方転位」を治すためのスプリントという装置(写真1)を装着しました。今日は、初診時にもあった右関節部の疼痛が災いして仕事に集中できないということで3回目の来院です。
そこで、痛みに対応できる3Dスプリント(写真2)を作成しました。これを入れることによって痛みは緩和されます。
顎関節症の患者さんは色々な症状を訴える方がいらっしゃいます。種々な状況に対応できるオプションを用意しておく必要があります。

幸い患者さんはJRの職員で交通費は、さほどかからないそうですが短期間で回数も少なく根治したいものです。

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写真1
「復位性関節円板前方転位」を治すための装置です。

写真2
右顎関節部の痛みを緩和するための3Dスプリント
痛みのあるときと、就寝時に着用してもらいます。
この装置を入れることによって大抵の顎関節症による痛みを
緩和することができます。
「関節円板前方転位」で一番避けなければならない症状は
口が開かなくことです。この装置にはこの症状を避ける工夫が
してあります。

2012年2月16日木曜日

今日は休日

毎週木曜日は休みです。
ゴルフで運動不足を解消です。今朝は寒かったですね。手袋をしていない左手は寒さのために“しびれ”ました。何とかワンラウンドプレーしました。さすがに空いていたので早く帰宅することができましたので、いまは顎関節症の本を執筆中です。

今日は「顎関節症治療でO脚(オーキャク)が治った」という項を書きました。みなさんは歯科医院でO脚が治るの?と不思議に思われることでしょう。
このブログでも、後日そのメカニズムを紹介していきたいと思います。
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2週間でO脚を治すことができました。
階段を手すりに頼ることなく上り下りできるようになりました。
長い間、整形外科で治療を受けてこられましたが
消炎剤・鎮痛薬の服用も必要なくなりました。
その他にも、いろいろな症状が改善されました。

2012年2月15日水曜日

顎関節症

顎関節症の患者さん向けの本を執筆中です。タイトルはまだ決まっていません。
どなたにも理解できる内容を心がけています。
5月ごろの出版予定です。
主な内容は“かみ合わせ”と全身症状です。
下の写真のようなケースがいくつも出てきます。
ご期待ください。

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“かみ合わせ”を治すことによって
簡単に体の歪みがとれたケースです。
整形外科から腰痛治療で紹介されてきた方です。
スプリントという装置を入れた途端に痛みがとれました。
腰痛が解消されたので運動ができるようになり、
1ヶ月後には、ご覧のような体形に変身しました。
心療内科で処方されていた抗うつ薬も必要なくなりました。
“かみ合わせ”治療で精神症状も改善されるとは驚きですね!