2012年7月4日水曜日

非復位性関節円板前方転位


この患者さんは69歳の女性です。
上の図は右側の関節部のMRI像です。診断名は非復位性関節円板前内方転位です。
写真が鮮明に撮れませんでしたので、トレースしたものを右に示しました。
顎関節症歴30年以上のベテラン患者です。
通常、関節円板前方転位の患者さんのMRI像では、下顎頭が側頭骨の関節窩に対して後方にあるようです。
この患者さんの場合は前上方に位置しています。顎関節症発症時は下顎頭が後方に移動したために関節円板が前方に転位し、その後下顎頭が前方に移動してきたという推測も成り立ちます。

ちなみに、この患者さんの左側の病名は復位性関節円板外方転位です。下顎骨は一体ですから片方の下顎頭が内方なら、もう一方は外方というのは肯けます。

開口量は40㎜です。非復位性関節円前方転位のケースとしては、開口量は大きいほうです。関節円板の存在していた部位は軟組織で満たされているようです。この軟組織が関節円板に変わる役目(疑似関節円板)をしているので開口量が保たれているようです。




最近、右の関節部に痛みが出てきたということです。
自分の人差し指で下顎頭の後ろを押すと痛みが治まるということです。
他の関節と同じように、顎関節が炎症を起こすと痛みが出ます。痛みの1つの原因はjoint effusion(関節浸出液)による内圧の亢進と考えられます。
痛みを軽減するためには、関節内視鏡で浸出液をとる方法もありますが一時的なものです。
ベストの方法は円板を元の位置に戻してやることでしょう。果たして可能なのでしょうか???

joint effusionはMRI像では白い線状のものとして確認することができます。
患者さんの痛みとMRI像で確認できるjoint effusionとは、かなりの確率で相関関係があります。

joint effusionについては、後日触れることにします。

0 件のコメント:

コメントを投稿