今日から話題を進め、顎関節症を、どのように治していくかについて話を進めていきたいと思います。
グッと噛んだときには、上と下の歯はもっとも多くの部位で接触します。このときの上下の歯列の関係を咬頭嵌合位といいます。
側頭骨下顎窩に対する下顎骨下顎頭の位置を下顎位といいます。
顎関節の神経筋システムや骨格構造が大きな力を受け入れやすい下顎位は、下顎窩に対して下顎頭が、前上方にあるときです。この位置をOkesonは、筋骨格安定位(musculoskeletally stable position)とよんでいます。
頭蓋と下顎骨の関係が筋骨格安定位にあるときに、上下の歯列が咬頭嵌合位にあれば、最大の咀嚼力が得られ、顎関節にも負担をかけない理想的な咬合を得ることができます。
まず、下顎位についての歴史的な変遷を次の図に示しておきます。
画像をクリックすると拡大されます。
この図は、
「有歯顎の咬合に関する基本的事項」小林賢一著 歯界展望Vol.111 No.3 2007-9より
引用、改変しました。
この図は、
「有歯顎の咬合に関する基本的事項」小林賢一著 歯界展望Vol.111 No.3 2007-9より
引用、改変しました。
下顎位は現在のようにCTやMRIで、下顎窩に対する下顎頭の位置関係が確認できなかった時代に提唱された最後退位、最上方位が理想的であるという考え方を経て、現在の前上方位という考え方に落ち着きました。
Grangerなどの最後退位を基に構築された理論がナソロジーです。この理論に従って構成された咬合は、すべて失敗に終わり多くの患者さんを失望させ、それに従事した歯科医を落胆させました。
スチュワート咬合器に代表されるように、いかに精細・緻密に下顎の動きを再現しようが、大本になる咬合位が誤っていると、人体にとって受け入れられないものとなります。
Boucherに師事していた日本の総義歯の大家は、今でも最後退位を主張しています。何か根拠があるからなのでしょうか?
最上方位を提唱したDawsonは、その誤りに気づき、前上方派に改宗しました。現在でも、Dawsonを最上方派であると、思い込んでいる日本の歯科医は大勢います。
何と言っても、前上方派の御大はOkesonです。彼は、この位置が骨格や神経筋システムにとっても一番受け入れやすい位置であることを、数多くの文献考察から証明しようとしています。この位置こそが、彼の主張する筋骨格安定位(musculoskeletally stable position)です。
Okesonの筋骨格安定位についての説明は、下顎窩・関節円板・下顎頭の排列にとどまり、全身の骨格、神経筋システムについて言及していません。
私は、筋骨格安定位を「全身の骨格、筋神経システムに為害作用を及ぼさない下顎窩・関節円板・下顎頭の排列」と定義したいと思います。
筋骨格安定位をどのように診断し、治療していくかということが明確にされていません。
次回から、この核心に迫っていきます。
今夕は、飲み会がありますので早め(と言っても、ちょっと早すぎ)にブログをアップしておきます。
0 件のコメント:
コメントを投稿