あの日は、あの時刻にクラウンの形成・印象をしていました。ちょうどバイトを採り材料が固まるのを待っていたときでした。あまりの揺れの大きさに、患者さんと共に3階の診療室から地上へ降りましたが、途中の階段では、このままビルが倒壊するのではないかと思うほどの揺れでした。
無事、道路に出て患者さんに「ひどい揺れでしたね」と話しかけたのですが、何か患者さんの話し方がおかしいので、口元を見たらバイトの印象材が口の中に入ったままでした。やはり、よっぽど慌てたのですね。
先週来院した患者さんは、「私の見積書の日付は2011年3月11日です。記念にとってあります。」と、おっしゃっていました。そう言えば、3時からの予約の患者さんは電車も止まっているのでキャンセルだろうと思っていましたが、何と自転車で(颯爽と?)来られました。「都内の移動は、いつも自転車を利用している」ということです。折角なのでコンサルテーションをし、契約しました。大地震の直後でも、しっかりと仕事をしていたということでしょうか。
さて、今回は3Dスプリントについての話を進めていきましょう。
私は、歯科大学卒業以来、大学院時代も含めて補綴分野に籍を置いていました。この関係もあり、開業し臨床を進めるうちに確かな根拠もないまま『顎関節症は“噛みあわせ”が主な原因である』という考えから離れることができませんでした。いつかは、この考えに基づいて顎関節症の咬合治療にチャレンジしてみたいと考えていました。
2007年に、私たちのグループが日本に招聘したことのある Dr.Dawson が彼の名著「EVALUATION, DIAGNOSIS, AND TREATMENT OF OCCLUSION PROBLEMS」を改訂し、「Functional Occlusion」を著しました。シエン社 http://www.shien.co.jp /から、この本の出版を知らされました。私は、情けないことに英語ができませんので、買うだけ買っておこうと思い購入しました。せっかく投資したので、眺めておりましたら、その中に Anterior Diprogramming Splint という語句をみつけました。ご承知のように Anterior は前歯という意味です。Diprogramming はプログラムを解除するという意味です。ADS は、「前歯に装着する咬合のプログラムを解除するスプリント」ということになります。
私は、直感的にこれだと思いました。現在でも、顎関節症の原因説が諸説紛々です。特に口腔外科分野で顎関節症を扱う先生方は、咬合原因説を敵のように攻撃するようです。
ADSを装着して、顎関節症から咬合という因子が取り除けるなら、咬合が顎関節症の原因であるかどうかを確認できるのではないかと考えました。
しかし、私の知っている ADS は、Lucia のジグ でした。Lucia のジグ は下図のように下顎頭を下顎窩の後上方へ押し上げるために、ナソロジーが全盛の時期に多用されました。
画像をクリックすると拡大されます。
次回から、3Dスプリントを紹介していきます。
「Functional Occlusion」 http://www.shien.co.jp/act/d.do?id=5429 は日本歯科大学新潟歯学部の小出教授らの手で、日本語版が2010年に医歯薬出版から出版されました。
田中先生、大変ご無沙汰しております。ご無沙汰しておりますのに、こんなところからで、失礼致します。以前、先生のところに勤務しておりました、松戸の川島と申します。
返信削除先日、何故かふと思いつき、「青山田中歯科」で検索致しますと、とても作りこまれた素晴らしいHPが出てきて、びっくりしました。それ以来、毎日、ブログを拝見しております。
今日は、昨年の地震の様子を読み、田中歯科が入っているビルを思い出すと、とても懐かしくなり、思わず、コメント欄に、書き込みをしてしまいました。
田中先生の、ますますのご活躍と、ご発展をお祈り致しております。